店を閉めて近所のBARで1杯だけ飲み、帰ると家に誰もいない。おかしいな、と思い携帯を見ると着信がかなりある。丁度また着信したので出ると嫁がなにやら慌てている。娘の具合が悪いらしい。車で病院へ行くと言うのでマンションの下で合流して娘の様子を伺ってみるとキョトンとした顔でこっちを見ている。「大丈夫そうじゃない?」よくよく話を聞くと前妻の5才になった子供、「れいら」の話だった。
意識不明で救急病院に運ばれたらしい。脳に異常がある?「そんな訳ないでしょ?」「多分、大丈夫だよ」「たいした事ないんじゃない?」冷静を装ったが、最悪の事体まで考えてしまい頭の中がパニック状態だった。信号が変わりかけブレーキを踏む妻に「そのまま行けよ!」逆ギレしてしまう。ここで俺達が事故してどうする?
どこをどう走ってきたか理解出来ないまま、病院へ到着すると前妻、彼氏、御両親が揃って救急病棟の待合室に待機していた。
落着いている雰囲気だったので少しホッとして話を聞くと「てんかん発作」だろうと。命に別状はない。治療室で色々な管を繋がれて横たわる彼女の頭を撫でた。涙が溢れそうになる。彼女の妹にあたる6ヶ月のもう一人の娘を連れていき「おねえちゃん早く元気になってね。」と心で呼び掛ける。
どうやら明朝、普通に目が覚めれば一度そのまま退院できるらしいので、一度家に帰り2時間程の仮眠。
早朝、病院へ戻ると寝起きで半泣きしながら「おしっこ」に連れていかれるレイラの姿があった。
良かった。本当に良かった。無事だった。
もう一度、眠りに着いた彼女を見つめながら泣いた。今度は涙をこらえる必要がなかった。
詳しい検査は後日という事だったので早々に退院できた。元気だ。元気が一番だ。
みんなを一瞬、凍りつかせ、恐怖と不安のどん底に陥れた小悪魔は悪夢の一夜を超え「パパ〜おもちゃ買って〜」と叫んでいた。もう、なんでも買ってやるよっ!